次の文章を読み
設問に答えなさい。
来年、
草児は中学生になる。
生存競争はさらに激しくなっていきました。
●草児は自分が
「食べる側」になれるとは、
どうしても思えない。
勉強も運動もできないわけではないが
突出してできるわけではない。
クラスにもなじめていない。
「ありがとう」と言っただけで、
岩かなにかが喋ったみたいに
びっくりされているのだから。
(中略)
「シフトの都合」で
予定外の休みをもらった母は、
同じ理由で休みがなくなった。
十連勤だなんて冗談じゃないよと
ぼやいていたのは最初の数日だけで、
半ば頃になると
家にいる時は無言で
テーブルにつっぷしているだけの、
物言わぬ生物になった。
祖母はなんだか近頃調子が悪いといって、
日中も寝てばかりいた。
古生代の生物たちも、
こんなふうに干渉し合うことなく、
暮らしていたのかもしれない。
同じ家の中にいても、
ほとんど言葉を交わさない。
母や祖母の気配だけを感じつつ、
ひとりで食卓に置かれたパンや
釜めしを食べた。
●【味がぜんぜんわからなかった。
給食もそうだ。
甘いとも辛いとも感じない】。
誰かと同じ空間にいても、
人間は簡単に「ひとり」になるものだと、
こんなふうになるずっと前から知っていた。
( 『タイムマシンに乗れないぼくたち』
寺地はるな より)
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■問
● 【味がぜんぜんわからなかった。
給食もそうだ。
甘いとも辛いとも感じない】
とありますが、草児が
「味がぜんぜんわからな」
くなっているのは、
家や学校でどのような
状況にあるからですか。
説明しなさい。
※この問に字数制限はありません。
解答欄の大きさに合わせて
記述する必要があります。
実物大の解答欄を見てところ
約10~20字だと思います。
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■解説・解答
学校での状況は前回と
前々回の問でやりましたね。
問3
【そう思うことで、
むしろ草児の心はなぐさめられる】
とありますが、 なぜですか。
※「そう思う」
≒「世界と自分とが
分厚い透明ななにかに
くっきりと隔てられている」
答:アクラスメイトに笑われたとしても、
分厚い透明ななにかによって
隔てられていると思うことで、
彼らの存在を気にせずに
いることができて安心するから。
問4
【草児は自分が「食べる側」になれるとは、
どうしても思えない】とありますが、
教室において
「食べる側」とはどのような人たちですか。
説明しなさい。
答:クラスの中で強い立場にいる
何か優れた能力がある人たち。
では、家での状況はどうなのでしょう。
それは本文の以下の
箇所から読み取れます。
★1
「干渉し合うことなく、
暮らしていた」
★2
「誰かと同じ空間にいても、
人間は簡単に『ひとり』になるもの」
問3と4の答えと★1と2をもとに
記述すれば良いのですが
★1と2の内容は
問3と4の内容を含むので
★1と2だけでまとめます。
(見やすいように★1と2を再掲します。)
★1
「干渉し合うことなく、
暮らしていた」
★2
「誰かと同じ空間にいても、
人間は簡単に「ひとり」になるもの」
↓
○「誰かと同じ空間にいても
干渉し合うことなく
『ひとり』で暮らしていた」
さらに、
【味がぜんぜんわからなかった】のは
精神的な要因が強いので
このときの心情も入れます。
「『ひとり』で暮らしていた」ときの心情は
「さみしい(さびしい)」で
良いのではないでしょうか。
すると、とりあえず
字数を気にせずに書くと
以下のようになると思います。
「誰かと同じ空間にいても
干渉し合うことなく
『ひとり』で暮らしていた
のでさみしい状況。」
これを削って20字以内にします。
◎「誰とも
交流せずに
孤独で
さみしい状況。」
※「干渉」→「交流」にしました。
(学校では「干渉」よりも「交流」の方が
表現として適切なため。)
最後に傍線部とつなげてみて
意味が分かるか確認します。
答:誰とも交流せずに
孤独でさみしい状況
だから
傍線部:味がぜんぜんわからなかった。
大丈夫ですね。
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■解答(学校発表なし)
誰とも交流せずに
孤独でさみしい状況。(18字)
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★おまけ
御三家などの最難関校では
今回の問のように
それまでの問とその答えが
次の問のヒントに
なっていることがあります。
このことに関しては
麻布学園国語科の中島先生が
『小学生のための
読解力をつける魔法の本棚』
という著書の中で
例題つきではっきりと
ご説明されています。
知っていると解きやすくなる
お得な情報ですね。
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