女子学院 2023年 大問題1 問1

■次の文章を読んで後の問に答えなさい。 

1999年夏、私はハンガリーの
草原に座っていました。

皆既日食に合わせて開催された、
若手研究会に参加させてもらったのです。

(中略)

それは初めて体験する、
幻想的で、
日常とは異質の風景でした。

(中略)

異変を感じたのか、
馬が何頭もヒヒーンといななき、
鳥やちょうが忙しそうに
低空飛行していきます。

そして、
さらにあたりが暗くなって、
ついに太陽の光が消えた瞬間―
夏の昼は闇になり、
360度の地平線は朝焼け色に染まって、
空には星がいくつもキラキラ
輝き始めました。

馬はもう声も出さずに、
じっとしています。

暗くて鳥や蝶の姿は見えませんが、
気配が消えています。

●【いっぽう、人間は大さわぎです】。

各国から集まった人たちからは
歓声が上がり、
ある人は口笛を吹き、
ある人はカメラのシャッターを切り、
カップルは抱き合っていました。

でも人間も、もし数分後には
月が通り過ぎて再び
太陽が顔を出すことを知らなければ、
本当にびっくりするだろうし、
世にも恐ろしいことが
起きたと感じることでしょう。

(中略)

古代の人たちにとって、
空のできごとは
今と比べものにならないほど
神秘的でおごそかな現象として
見えていたことでしょう。

ひるがえって現代の私たちは、
日食がどうして起こるのかを
科学的に知るようになりました。

(中略)

(野田 祥代さちよ
『夜、寝る前に読みたい宇宙の話』より)

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■問

●【いっぽう、人間は大さわぎです】
 とありますが、皆既日食に対して、
 人間の反応が他の生き物たちと
 違うのはなぜですか、
 理由を説明しなさい。

※問に字数制限はなく、マス目がない
 解答欄の大きさに合わせて
 記述する必要があります。

※実物大の解答用紙を確認したところ
 約50字~100字だと思います。

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■解説・解答

 まず、問の確認をします。

「【いっぽう、人間は大さわぎです】
 とありますが、皆既日食に対して、
 人間の反応が他の生き物たちと
 違うのはなぜですか、
 理由を説明しなさい。」とあるので、

 皆既日食の際に、なぜ人間の反応が
 他の生き物たちと違うのかを
 説明します。

 次に、その答えになりそうな所を
 本文から探します。

 その際に頭の中に
「人間が他の生き物と違う理由」
 というイメージを入れてから探しましょう。

 すると以下のところが
 見つかるのではないでしょうか。

★1「『日食』は、
 太陽の手前を月が横切って
 日光をさえぎる天体現象です
 …私も知識はありました」

※私は日食についての知識があったから
 生き物とは違う反応をしたんですね。

★2「人間も、もし数分後には
 月が通り過ぎて
 再び太陽が顔を出すことを知らなければ、
(本当にびっくりするだろうし、
 世にも恐ろしいことが
 起きたと感じることでしょう)」

※「人間も、もし~を知らなければ」
 という形ですが、
 人間は~を知っているから
 生き物と違う反応をしたと
 読み取れますね。

★3「現代の私たちは、
 日食がどうして起こるのかを
 科学的に知るようになりました」

※古代の人たちとの比較ですが、
 生き物との違いにもなっています。

 そしてこの★1~3をまとめます。
(見易いように★1~3を再掲します。)

★1「『日食』は、
 太陽の手前を月が横切って
 日光をさえぎる天体現象です
 …私も知識はありました」
★2
「人間も、もし数分後には
 月が通り過ぎて
 再び太陽が顔を出すことを知らなければ」
★3
「現代の私たちは、
 日食がどうして起こるのかを
 科学的に知るようになりました」

★1+★2+★3

☆「現代の私たちは、
 『日食』は
 太陽の手前を月が横切って
 日光をさえぎる天体現象だと
 科学的に知るようになり
 数分後には月が通り過ぎて
 再び太陽が顔を出すことを
 知っているから。」

※★3→1→2の順に
 入れ替えました。

※★3の中の
「日食がどうして起こるのか」を
 ★1の中の表現で具体的に表しました。

 これだと少し不自然なところもあるので
 読み手(採点者)に分かり易いように
 少し修正します。

☆「現代の私たちは、
 『日食』は
 太陽の手前を月が横切って
 日光をさえぎる天体現象だと
 科学的に知るようになり
 数分後には月が通り過ぎて
 再び太陽が顔を出すことを
 知っているから。」

◎「人間は、『日食』は 
 太陽の手前を月が横切って 
 日光をさえぎる天体現象で、 
 数分後には月が通り過ぎて 
 再び太陽が顔を出すことを 
 科学的に知っているから。」 

※最初の「現代の」を削りました。
(古代の人たちとではなく
 生き物との違いを説明するため。)

※「私たちは」→「人間は」にしました。
(問では「人間の反応が…なぜ」
 と聞いているので。)

※「知るようになり」と
 「知っているから」は
 似た表現なので1つにまとめました。

※「科学的に」→最後に移動しました。

※細かいことですが、問では
 「違ったのはなぜですか」ではなく
 「違うのはなぜですか」と
 「現在形」で聞いているので
 答えも「現在形」で記述します。

 最後に、問と繋げてみて
 意味が分かるか確認します。

 人間は、「日食」は 
 太陽の手前を月が横切って 
 日光をさえぎる天体現象で、 
 数分後には月が通り過ぎて 
 再び太陽が顔を出すことを 
 科学的に知っているから
 
 皆既日食に対して、
 人間の反応が他の生き物たちと違う。

 大丈夫ですね、意味が分かります。

☆解説

 日食のことを科学的に知らなければ
 日食による暗闇や天気の急変が
 いつ終わるのかも分からず
 不安になってしまいます。

 しかし人間は、数分後には
 この暗闇と天気の急変は
 終わるんだと分かっているから
 安心し日食というイベントを
 楽しめるわけです。
 
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■解答

 人間は、「日食」は 
 太陽の手前を月が横切って 
 日光をさえぎる天体現象で、 
 数分後には月が通り過ぎて 
 再び太陽が顔を出すことを 
 科学的に知っているから。
 
 (70字)

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■おまけ

 女子学院中学の国語は
 以前は問題数が多く
 そのほとんどが選択肢問題でしたが
 最近は問題数は少なくなり
 記述問題が増えてきました。

 その証拠に、2014年と
 2023年の問題を比較してみると

 2014 小問数30 記述問題4
 2023 小問数16 記述問題8

 となっています。

 やはり、女子学院も
 他の御三家中学と同様に
 東大に似た問題を出題し、
 中学入試の段階で
 東大タイプの問題に強い受験生を
 確保したいのだと思います。
 
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