■次の文章を読み、
後の問に答えなさい。
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主人公の「想(そう)」は
小学四年生。
父と「本当の母さん」は
二年前に離婚し、今は
「新しいお母さん」の「渚さん」 と、
最近生まれた弟「海(かい)君」と
父の四人で暮らしている。
渚さんは想にもやさしかったが、
ある日育児の疲れからか、
ドアの内側から扉が開かない
ようにするドアガードを外し忘れ、
想を閉め出してしまった。
想はたまたま同じフロアに住む
「おばあさん」に救われたが、
その後も、毎日午後五時まで
ドアガードは外されなくなってしまった。
「また、あなた!」
ふり返ると、あのときの
おばあさんが立っていた。
「部屋に一緒に行きましょうか?」
とおばあさんは言ってくれたけれど、
僕は抵抗した。
「赤ちゃんが夜中に泣くから、
母さんが寝られないんです。
だから、昼間は
二人を寝かしてあげたいから。
僕、夕方までここにいます」
●【「大人みたいなことを
言うんじゃありません!」
怒ったようにそう言うと、
おばあさんはそう言ったことを
後悔したみたいに唇を軽く噛んだ。】
窪 美澄(くぼ みすみ)著
「星の随(まにま)に」
『夜に星を放つ』所収
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■問
●【「大人みたいなことを
言うんじゃありません!』/
怒ったようにそう言うと、
おばあさんはそう言ったことを
後悔したみたいに
唇を軽く噛んだ】とあるが、
この時の「おばあさん」の気持ちとして
最も適当なものを、
次の中から選びなさい。
ア 子どものうちから大人のように
周囲に気をつかっているのを
心配には思うが、そうせざるを
得ないのかもしれない
「僕」を強く責めるのもよくないと思った。
エ まだ子どもの「僕」が大人みたいに
自分より家族のことを優先し
苦しむ必要はないとは思うが、
力になれる保証もないのに
説教がましく言ったことを悔やんだ。
※本来はア~エの4択でしたが
2択にしました。
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■選択肢問題の解き方の手順
1 問で聞かれていることを確認する。
何について考えるのか?
2 1にもとづいて本文を読みかえす。
※本文全てを丁寧に読む必要はない。
正誤の判断材料が書かれていそうな
ところだけ丁寧に読んで
そこに線を引く。
※頭の中だけで整理できるのであれば
線は引かなくても良い。
3 2で見つけた箇所にもとづいて
それぞれの選択肢の正誤を判断する。
※選択肢が長い時は
句読点などで切り、そこに
/(スラッシュ)を入れる。
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■解説・解答
手順3から説明します。
ア 【子どものうちから大人のように
周囲に気をつかっているのを
心配には思うが、/】
⇒〇
想の
「赤ちゃんが夜中に泣くから、
母さんが寝られないんです。
だから、昼間は
二人を寝かしてあげたいから。
僕、夕方までここにいます」
というセリフからは、
【子どものうちから大人のように
周囲に気をつかって】います。
そしておばあさんは
「部屋に一緒に行きましょうか?」
と提案しているので
【心配に思って】います。
【そうせざるを
得ないのかもしれない
「僕」を強く責めるのも
よくないと思った。】
⇒〇
おばあさんの
「また、あなた!」というセリフから
おばあさんが、閉め出された想を
見つけるのはこれが
2回目だということが分かります。
また、想の
「赤ちゃんが夜中に泣くから、
母さんが寝られないんです。
だから、昼間は
二人を寝かしてあげたいから。
僕、夕方までここにいます」
というセリフから
おばあさんは想が
【そうせざるを得ないかもしれない】
と思っています。
そして、文章の最後に
「おばあさんはそう言ったことを
後悔したみたいに唇を軽く噛んだ。」
とあるので、【「僕」を強く責め
るのもよくないと思った。】と言えます。
エ
【まだ子どもの「僕」が大人みたいに
自分より家族のことを優先し
苦しむ必要はないとは思うが 、/】
⇒〇
想の
「赤ちゃんが夜中に泣くから、
母さんが寝られないんです。
だから、昼間は
二人を寝かしてあげたいから。
僕、夕方までここにいます」
というセリフに対して
「大人みたいなことを
言うんじゃありません!」
と言っているので。
【力になれる保証もないのに
説教がましく言ったことを悔やんだ。/】
⇒×
おばあさんは
「部屋に一緒に行きましょうか?」と
想に提案しているので
【力になれる保証もないのに】
とは思っていません。
なんとかして力になりたいと
思っているからこそ
このように提案したのです。
×です。
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■解答(学校発表のもの)ア
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★おまけ
『星の随に』の作者、窪さんは
カリタス女子中・高をご卒業後
短大を中退されています。
広告制作会社勤務、
フリーランスの編集ライターを経て
現在は作家として
ご活躍されています。
この「星の随に」が収録されている
『夜に星を放つ』は
2022年5月に出版され
直木賞を受賞されました。
「星の随に」は
海城の他に桐光学園中でも
出題されています。
窪さんのTwitterは
@misumikubo
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