2023年 海城中 一般入試1 大問題1 問1

■次の文章を読み、
 後の問に答えなさい。

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主人公の「想(そう)」は
小学四年生。

父と「本当の母さん」は
二年前に離婚し、今は
「新しいお母さん」の「渚さん」 と、
最近生まれた弟「海(かい)君」と
父の四人で暮らしている。

渚さんは想にもやさしかったが、
ある日育児の疲れからか、
ドアの内側から扉が開かない
ようにするドアガードを外し忘れ、
想を閉め出してしまった。

想はたまたま同じフロアに住む
「おばあさん」に救われたが、
その後も、毎日午後五時まで
ドアガードは外されなくなってしまった。

「また、あなた!」

ふり返ると、あのときの
おばあさんが立っていた。

「部屋に一緒に行きましょうか?」

とおばあさんは言ってくれたけれど、
僕は抵抗した。

「赤ちゃんが夜中に泣くから、
母さんが寝られないんです。

だから、昼間は
二人を寝かしてあげたいから。

僕、夕方までここにいます」

●【「大人みたいなことを
言うんじゃありません!」

怒ったようにそう言うと、
おばあさんはそう言ったことを
後悔したみたいに唇を軽く噛んだ。】

窪 美澄(くぼ みすみ)著

「星の随(まにま)に」
『夜に星を放つ』所収

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■問 

●【「大人みたいなことを
 言うんじゃありません!』/
 怒ったようにそう言うと、
 おばあさんはそう言ったことを
 後悔したみたいに
 唇を軽く噛んだ】とあるが、
 この時の「おばあさん」の気持ちとして
 最も適当なものを、
 次の中から選びなさい。

ア 子どものうちから大人のように
 周囲に気をつかっているのを
 心配には思うが、そうせざるを
 得ないのかもしれない
「僕」を強く責めるのもよくないと思った。

エ まだ子どもの「僕」が大人みたいに
 自分より家族のことを優先し
 苦しむ必要はないとは思うが、
 力になれる保証もないのに
 説教がましく言ったことを悔やんだ。

※本来はア~エの4択でしたが
 2択にしました。

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■選択肢問題の解き方の手順

1 問で聞かれていることを確認する。

  何について考えるのか?

2 1にもとづいて本文を読みかえす。

※本文全てを丁寧に読む必要はない。
 
 正誤の判断材料が書かれていそうな
 ところだけ丁寧に読んで
 そこに線を引く。

※頭の中だけで整理できるのであれば
 線は引かなくても良い。

3 2で見つけた箇所にもとづいて
  それぞれの選択肢の正誤を判断する。

※選択肢が長い時は
 句読点などで切り、そこに
 /(スラッシュ)を入れる。

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■解説・解答

 手順3から説明します。

ア 【子どものうちから大人のように
 周囲に気をつかっているのを
 心配には思うが、/】
⇒〇

 想の
「赤ちゃんが夜中に泣くから、
 母さんが寝られないんです。
 だから、昼間は
 二人を寝かしてあげたいから。
 僕、夕方までここにいます」
 というセリフからは、

【子どものうちから大人のように
 周囲に気をつかって】います。

 そしておばあさんは
「部屋に一緒に行きましょうか?」

 と提案しているので
【心配に思って】います。

【そうせざるを
 得ないのかもしれない
「僕」を強く責めるのも
 よくないと思った。】
⇒〇

 おばあさんの
「また、あなた!」というセリフから
 おばあさんが、閉め出された想を
 見つけるのはこれが
 2回目だということが分かります。

 また、想の
「赤ちゃんが夜中に泣くから、
 母さんが寝られないんです。
 だから、昼間は
 二人を寝かしてあげたいから。
 僕、夕方までここにいます」
 というセリフから
 おばあさんは想が
【そうせざるを得ないかもしれない】
 と思っています。

 そして、文章の最後に
「おばあさんはそう言ったことを
 後悔したみたいに唇を軽く噛んだ。」
 とあるので、【「僕」を強く責め
 るのもよくないと思った。】と言えます。

【まだ子どもの「僕」が大人みたいに
 自分より家族のことを優先し
 苦しむ必要はないとは思うが 、/】
⇒〇

 想の
「赤ちゃんが夜中に泣くから、
 母さんが寝られないんです。
 だから、昼間は
 二人を寝かしてあげたいから。
 僕、夕方までここにいます」
 
 というセリフに対して

「大人みたいなことを
 言うんじゃありません!」
 と言っているので。

【力になれる保証もないのに
 説教がましく言ったことを悔やんだ。/】
⇒×

 おばあさんは
「部屋に一緒に行きましょうか?」と
 想に提案しているので
【力になれる保証もないのに】
 とは思っていません。

 なんとかして力になりたいと
 思っているからこそ
 このように提案したのです。

 ×です。

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■解答(学校発表のもの)ア

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★おまけ

『星の随に』の作者、窪さんは
 カリタス女子中・高をご卒業後
 短大を中退されています。

 広告制作会社勤務、
 フリーランスの編集ライターを経て
 現在は作家として
 ご活躍されています。

 この「星の随に」が収録されている
『夜に星を放つ』は
 2022年5月に出版され
 直木賞を受賞されました。

「星の随に」は
 海城の他に桐光学園中でも
 出題されています。

 窪さんのTwitterは
@misumikubo

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