■次の文章を読み、
後の問に答えなさい。
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壁際は全部本棚で、
その前に描きかけの絵がいくつかあった。
これは多分、
油絵の具で描いた絵。
【中略】
僕は、描きかけの絵
(黒が一面に塗られているだけで
なんの絵かわからない) を見、
本棚を見た。
【中略】
おばあさんは僕に構わず、
キャンバスの前に座り絵筆を動かしていく。
真っ黒、
と思ったのは間違いで、
絵の下に真っ赤な炎が渦を巻いている。
「あの日の夜空を描いているの」
僕が何も言わないのにおばあさんは言った。
「あの日の夜空?」
「……そうこれは、
戦争が終わった年に東京が燃えた夜の絵」
日本で戦争があったことは
知っているけれど、僕にはあまりに
遠すぎる事実だった。
黙ってしまった僕に気づいたのか、
おばあさんが僕に顔を近づけて
密やかな声で言った。
「焼夷弾が落ちてきてね、
東京の下町はみんな焼けたの」
●【「……しょうい、だん?」】
僕の質問におばあさんは
違うキャンバスを見せた。
銀色の飛行機、芋虫のおなか
みたいなところがぱかっと開いて、
小枝みたいなものが
空から落ちている絵だった。
窪 美澄(くぼ みすみ)著
「星の随(まにま)に」
『夜に星を放つ』所収
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■問
●「しょういだん?」 とあるが、
ここで「焼夷弾」を
ひらがなで表記することで、
どのようなことが表わされていると
考えられるか。
次の中から最も適当なものを選び、
記号で答えなさい。
イ 「僕」は焼夷弾が
「東京の下町」を焼き尽くすほどの
爆弾であることに驚きを感じ、
頭の中が真っ白になっているということ。
ウ 「しょういだん」 という音が
どういうものを指すのか
「僕」には分からず、
頭の中で具体的に
イメージできていないということ。
※本来はア~エの4択でしたが
2択にしました。
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■選択肢問題の解き方の手順
1 問で聞かれていることを確認する。
何について考えるのか?
2 1にもとづいて本文を読みかえす。
※本文全てを丁寧に読む必要はない。
正誤の判断材料が書かれていそうな
ところだけ丁寧に読んで
そこに線を引く。
※頭の中だけで整理できるのであれば
線は引かなくても良い。
3 2で見つけた箇所にもとづいて
それぞれの選択肢の正誤を判断する。
※選択肢が長い時は
句読点などで切り、そこに
/(スラッシュ)を入れる。
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■解説・解答
この問のポイントは
「……しょうい、だん?」の最後に
「?」マークが付いているのと
その次に「僕の質問に」と
続いているところです。
つまり、僕は「しょうい、だん」が
どういう物か分からないので
おばあさんに質問したのです。
その考えをもとに
各選択肢を見てみましょう。
イ
【「僕」は焼夷弾が
「東京の下町」を焼き尽くすほどの
爆弾であることに驚きを感じ、/】
⇒〇
【焼夷弾が「東京の下町」を
焼き尽くすほどの爆弾である】のは
その前のおばあさんのセリフに
「焼夷弾が落ちてきてね、
東京の下町はみんな焼けたの」
とあることから分かる。
また「……しょうい、だん?」
というセリフの最初は
「……」となっているので
驚いていると言えます。
【頭の中が真っ白になっているということ。】
⇒△
「……しょうい、だん?」の最初に
「……」とありますが、これだけで頭の中が
真っ白になっているとは言い難いです。
なぜなら、その次に「しょうい、だん」と
言葉を発しているからです。
ウ
【「しょういだん」 という音が
どういうものを指すのか
「僕」には分からず、/】
⇒〇
分からないから「?」マークが付き
「僕の質問に」おばあさんは焼夷弾が
描かれている絵を見せています。
【頭の中で具体的に
イメージできていないということ。】
⇒〇
「頭の中で具体的にイメージできていない」
から、「?」マークが付き
おばあさんに質問しているわけです。
・イ⇒〇1つ、△1つ
・ウ⇒〇2つより
ウが最も適当なものになります。
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■解答(学校発表のもの)ウ
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★おまけ
海城も前回扱った渋渋同様
選択肢問題が多いです。
これは海城も入試が複数回あり
採点にあまり時間をかけられない
からだと思います。
※最終科目終了から合格発表まで
・一般入試1⇒約23時間後
・一般入試2⇒約23時間後
※入試が1回で
記述が多い学校の
合格発表までの時間
・筑駒⇒約50時間後
・開成⇒約47時間後
・麻布⇒約50時間後
ちなみに
記述が多い開成や麻布と
選択肢問題が多い海城を
併願するのは
国語の問題傾向からは
あまり良くないと思います。
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