論説文は、話題と
筆者の主張を掴みましょう。
「…について、筆者は~
ということを言おうとしている。」
と考える(要約する)と
内容が理解しやすくなります。
では今日も2023年開成中学の
大問題1の文章を読んでみます。
かなり長い文章なので
6分割にしました。
その2つ目の部分です。
------------------
■次の文章を読んで
「…について、筆者は~
ということを言おうとしている。」
の型で要約しなさい。
※オリジナル問題です。
※漢字の問のためにカタカナ表記のものは
入試問題のままにしてあります。
------------------
以下の文章は、
建築家である筆者が、
1980年代の建築業界と、
高知県榛原(ゆすはら)町での
経験とをふりかえった文章です。
読んで、
後の問に答えなさい。
なお、本文中の[=]は、
出題者の付けた注・解説です。
1980年代の建築の世界も、
戦場を失った武士によく似ていた。
第二次大戦後の日本は、
確かに、
建築を必要としていた。
西欧に追いつくために、
たくさんの建築を建て、
速い鉄道を走らせ、
長い道路を作る必要があった。
それが、
1970年の大阪万博の頃には、
ほぼモクヒョウを達してしまった。
戦場はなくなり、
江戸時代のような平和な時代が
やってきたのである。
それでも、
江戸幕府が武士政権であったように、
1970年が過ぎても、
戦後日本の政治も経済も、
依然として建築主導であり、
建築は作られ続けなければならなかった。
作る必要のないものも、
たくさん作らなければならなかった。
無理に無理を重ねて行きついたその先が、
80年代のバブル経済であった。
バブル経済は、土地の値段が
根拠のない非常識のレベルにまで
高騰した現象である。
が、土地は土地の論理によって
高騰したのではない。
土地はその上に建築を建て続けるという
圧力に押されて、
根拠なく高騰したのである。
僕が飛び込んでいった
80年代の建築業界は、
様々な意味で、武士道が支配する
閉じられたイキグルしい世界であった。
(隈研吾(くまけんご)『ひとの住処』)
------------------
■解説
まず、最後の1文が
この文章の内容を
簡潔にまとめているということに
気づいて下さい。
「僕が飛び込んでいった
80年代の建築業界は、
様々な意味で、
武士道が支配する
閉じられたイキグルしい世界であった。」
ただ、ここには
「武士道が支配する」という
比喩表現が含まれているので
比喩を使わない表現にしましょう。
では、「武士道が支配する」とは
どういうことなのでしょうか。
それは以下の内容ですね。
「政治も経済も、
依然として建築主導であり、
建築は作られ続けなければならなかった。
作る必要のないものも、
たくさん作らなければならなかった。
無理に無理を重ねて行きついたその先が、
80年代のバブル経済であった。
バブル経済は、土地の値段が
根拠のない非常識のレベルにまで
高騰した」
これだと少し長いので
以下のように簡潔にまとめます。
「政治も経済も、
依然として建築主導であり、
作る必要のないものも、
たくさん作らなければならなかった。
その結果、土地の値段が
根拠のない非常識のレベルにまで
高騰するという
バブル経済になった。」
その状態が
「閉じられた息苦しい世界であった」
と筆者は言っているわけですね。
※内容の解説
1970年の大阪万博の頃には
日本のインフラは整備されたので
新しい建物を建てる必要は
なくなってしまいました。
しかし、そんな状態でも
無理して建物を建て続けた結果
土地の値段が
根拠のない非常識のレベルにまで
高騰する、バブル経済に
なってしまいました。
そうなるともうさすがに
「新しい建物はいらない」という
世論になってしまい
新しく建築業界に飛び込んだ
筆者にとっては
息苦しい状態だったわけですね。
------------------
■解答
筆者が飛び込んでいった
80年代の建築業界について
「政治も経済も、
依然として建築主導であり、
作る必要のないものも、
たくさん作らなければならず
その結果、土地の値段が
根拠のない非常識のレベルにまで
高騰してしまい
閉じられた息苦しい世界であった。」
ということを言おうとしている。
------------------
★おまけ
なぜ、実際の入試問題には無い
要約の問を、このメルマガで
扱っているのか?
それは、文章の内容が
ある程度理解できていないと
いくら問に対する解法を身に付けても
解けないからです。
以前、私が担当していて
開成に合格した生徒も
模試の点数は悲惨でしたが
この、文章の要約だけは
しっかりとできていました。
「この文章はどんなお話だった?」
この質問に、簡潔に
答えられるようにしましょう。
------------------