論説文は、話題と
筆者の主張を掴みましょう。
「…について、筆者は~
ということを言おうとしている。」
と考える(要約する)と
内容が理解しやすくなります。
2023年開成中学
大問題1の文章の
6分割中の4つ目の部分です。
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■次の文章を読んで
「…について、筆者は~
ということを言おうとしている。」
の型で要約しなさい。
※この問はオリジナルです。
※漢字の問のためにカタカナ表記のものは
カタカナのままにしてあります。
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以下の文章は、
建築家である筆者が、
1980年代の建築業界と、
高知県檮原(ゆすはら)町での
経験とをふりかえった文章です。
なお、本文中の[=]は、
出題者の付けた注・解説です。
しかし、檮原では
違う時間が流れていた。
この町と、 東京の現場とは、
違う空気が流れていた。
檮原に来て、
谷に流れる霧を眺めていると、
ゆったりしてしまって、
東京に戻ろうなどという気分が
消えてしまった。
食べ物はおいしかった。
米からして、
味がまったく違った。
匂い米という
独特の香りのする米を混ぜて炊くので、
白米が香ばしいのである。
タイでこれと同じ香りの米を
食べたことがあって、
タイ人はそれをジャスミンライスと
呼びならわしていた。
現場でも、
「職人とは絶対直接話を
しないでください!」
などというギスギスした雰囲気はなく、
色々な職人と自由に話ができたし、
友人にもなった。
昼間は、彼らが作業する脇で、
彼らの手の動かし方を眺めながら、
色々質問をぶつけて、
そんなことも知らないのかと笑われた。
大学では決して教われなかった、
建築という行為の秘密の数々に
直接触れることができた。
彼らが作っている脇で、
僕もいろいろ注文を出した。
「そんなことできるわけねえだろ」と、
一蹴されることもあったし、
ギャクに「そんなの簡単だよ、
かえって手間がかかんねえよ。
本当にそれでいいのか」などと、
笑って返されることもあった。
現場所長というマネージャーが
間に入ったら、絶対起こらないような
やり取りができた。
設計図を描いている時には
思いつかなかった、
おもしろい仕上げやディテールを
実現することができた。
たとえば、左官
[=主に建物の壁を塗る仕事をする人]
の職人はいろいろと
無理を聞いてくれるオヤジで、
どこまで土壁の中に
ワラを入れられるかということに、
二人で挑戦した。
僕は普通の土壁は
表面がツルツルしすぎていて、
檮原にはふさわしくないと感じた。
土壁はヒビが入らないように
スサと総称されるワラや糸くずを
混ぜるのが普通である。
入れるスサの量を増やすと、
普通の土壁とは違う
素朴な表情が出ることがわかって、
ギリギリまでスサを増やしてもらった。
「こんなザラザラで本当にいいんか」
「大丈夫、大丈夫」といった
掛け合いをしながら、
見たことのない壁ができあがった。
千利休がデザインした待庵(たいあん)
(京都府大山崎町)という
国宝の茶室があって―
国宝の茶室は日本に3つしかない。
あとのふたつは『蜜庵』(みったん)
(京都市、大徳寺塔頭龍光院)と
『如庵』(じょあん)
(愛知県犬山市の有楽苑に移築)だ―
その黒い壁に、
普通以上の量のスサが塗り込んであって、
その繊維だらけの壁が
得も言われぬあたたかい質感で迫ってきた。
東京の現場所長に
スサを増やしてといっても、
笑われるだけであった。
それが山奥で職人と仲良くなって、
意外なほど簡単に実現してしまった。
(隈研吾(くまけんご)『ひとの住処』)
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■解説
まず何についての話かと言うと
この文章の冒頭に
「しかし、檮原では
違う時間が流れていた。
この町と、
東京の現場とは、
違う空気が流れていた。
檮原に来て…」
とあるので
「檮原での経験」について
筆者は述べていますね。
それがどうだったのかと言うと
★1「ゆったりしてしまって」
(ギスギスした雰囲気はなく)
★2「色々な職人と自由に話ができたし、
友人にもなった。」
★3「建築という行為の秘密の数々に
直接触れることができた。」
★4「設計図を描いている時には
思いつかなかった、
おもしろい仕上げやディテールを
実現することができた。」
と言っていますね。
※要約をする際は
抽象的な部分だけ抜き出して下さい。
具体例を色々と挙げたが
筆者は結局何が言いたかったのか?
を考えます。
次に、今見つけた★1~4をまとめます。
(見やすいように★1~4を再掲します。)
★1「ゆったりしてしまって」
(ギスギスした雰囲気はなく)
★2「色々な職人と自由に話ができたし、
友人にもなった。」
★3「建築という行為の秘密の数々に
直接触れることができた。」
★4「設計図を描いている時には
思いつかなかった、
おもしろい仕上げやディテールを
実現することができた。」
↓
◎「ゆったりとした雰囲気の中
色々な職人と自由に話ができ
友人にもなった。
その結果
建築という行為の秘密の数々に
直接触れることができ
設計図を描いている時には
思いつかなかった
おもしろい仕上げやディテールを
実現することができた。」
※無理して1文にする必要はないです。
(文の数が多いという理由で
減点されることはありません。)
それよりも、読んだ人が
理解しやすい文にしましょう。
高知県檮原町という
ゆったりとしたところに来たおかげで
東京にいるときとは違う経験ができ
その結果、建築家として役に立つ
新たな発見ができたというわけですね。
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■解答
檮原での経験について
「ゆったりとした雰囲気の中
色々な職人と自由に話ができ
友人にもなった。
その結果
建築という行為の秘密の数々に
直接触れることができ
設計図を描いている時には
思いつかなかった
おもしろい仕上げやディテールを
実現することができた。」
ということを言おうとしている。
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★おまけ
「…ではなく~」のように
前の内容を否定して
後ろの内容を肯定するときは
その後ろの内容がとても重要です。
例えば今回の文章でも
「東京でのギスギスした雰囲気」を否定して
「檮原でのゆったりとした雰囲気」を
肯定しています。
どちらか一方だけの話をしても
説得力に欠けるので
両方を比較して
「でも、後者の方が良いですよね」
と主張しているわけです。
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