2023年 開成中 大問題1 随筆(5/6)

論説文は、話題と
筆者の主張を掴みましょう。
 
「…について、筆者は~
 ということを言おうとしている。」  

 と考える(要約する)と
 内容が理解しやすくなります。
 
 2023年開成中学
 大問題1の文章の
 6分割中の5つ目の部分です。

-------------------
■次の文章を読んで

「…について、筆者は~
 ということを言おうとしている。」

 の型で要約しなさい。

※この問はオリジナルです。

-------------------

 以下の文章は、
 建築家である筆者が、
 1980年代の建築業界と、
 高知県檮原(ゆすはら)町での
 経験とをふりかえった文章です。

 なお、本文中の[=]は、
 出題者の付けた注・解説です。

いろいろな職人と友人になったが、
中でもユニークだったのが、
オランダ人の紙漉(すき)職人、
ロギールである。

「変な外国人が、
変な紙漉いてるんだけど、
会いたかったら紹介するよ」と、
役場の若い担当者にいわれた。

なんでこんな山奥に
オランダ人がいるのだろうかと、
不審に思った。

それに、
高知の紙漉きといえば、
仁淀(によど)川沿いが有名で、
檮原と和紙という組み合わせも、
意外だった。

狭い山道を登っていくと、
古いボロボロの民家があって、
そこでロギールが作業をしていた。

捨てられた廃屋を見付けて
住み込んだけれど、
電気が来てないんだよという話だった。

あんな真っ暗な中で、
よく作業をしたり、
暮らしたりできるものだと
感心してしまった。

人物がおもしろいだけではなく、
作っている紙もおもしろかった。

コウゾ[=和紙の原料となる植物]の
黒い樹皮が大量に漉き込んであって、
ザラザラだし、
ゴワゴワしているのである。

コウゾ以外の栗や杉の木の皮を
漉き込む実験もしていて、
不思議なテクスチャ [=質感・感触]や
色合いの紙が、
床にたくさん転がっていた。

紙の値段を尋ねたら、
「いくらにしていいかわかんないなあ」
と答える。

その一言で、
ロギールと徹底的に
つきあってみることにした。

山で拾ってきた
木の枝やつるに和紙をはりつけた
ロギールの手作りのスタンドも、
今まで僕が使ったこともない
やわらかな曲線が出て、気に入った。

檮原の山奥にぴったりだと思って、
設計中の「雲の上のホテル」の
全客室に置くことにした。

客室の壁は、
ロギールの和紙を
額縁に入れて飾ることを思いついた。

普通はホテルの客室の壁には、
版画とか写真を好んで飾る。

しかし、山奥のホテルには、
そんなこじゃれたアートは
ふさわしくない。

あの不思議な和紙は、
額縁に入れるにふさわしい迫力がある。

(隈研吾(くまけんご)『ひとの住処』)

-------------------
■解説

 何についてのお話かは
 分かりやすいですね。

 そう、オランダ人の紙漉職人
 ロギールについてです。

 では、なぜ筆者は
 友人になった職人たちの中で 
 ロギールのことを紹介したのでしょう。

 それは、ロギールが
「人物がおもしろいだけではなく、
 作っている紙もおもしろかった。」
 からですね。

 ただ、これだけだと簡潔過ぎて
 どういうことなのか
 読み手には分かりづらいので
 少し説明を加えます。

 まず「人物がおもしろい」については
★1「山奥」で
★2「捨てられた廃屋」に住んでいて
 そこは★3「電気が来てない」
 ということですね。

★1~3のまとめ

○「山奥の、電気が来ない
 捨てられた廃屋に住んでいて」

 次に、「作っている紙もおもしろかった」
 については
「コウゾの黒い樹皮が…
 コウゾ以外の栗や杉の木の皮を
 漉き込む実験もしていて」

☆1「様々な木の皮を
   漉き込む実験をしていて」

「不思議なテクスチャ[=質感・感触]
 や色合いの紙が床にたくさん転がっていた」

☆2「不思議なテクスチャや色合いの紙を
 たくさん作っていた」

 また、
「紙の値段を尋ねたら
『いくらにしていいかわかんない…』
 と答える」

☆3「採算度外視で紙を作っていた」

のようにすると良いと思います。

※セリフは、そのままの形で
 書かないようにしましょう。

(採点者に、読んで分かりやすくし
 自分の理解度をアピールするため)

☆1「様々な木の皮を
   漉き込む実験をしていて」
☆2「不思議なテクスチャや色合いの紙を
   たくさん作っていた」
☆3「採算度外視で紙を作っていた」

☆1~3のまとめ

○「採算度外視で
 様々な木の皮を漉き込む実験をしていて
 不思議なテクスチャや色合いの紙を
 たくさん作っていた」

 そしてその結果どうしたのか?というと
「ロギールの手作りスタンドも…
 設計中の…ホテルの全客室に
 置くことにした」んですね。

※解説

 この前の文章(6分割の4つ目)で
 筆者は高知県檮原町において
 東京とは違う経験をし
 それにより
 おもしろい仕上げやディテールを
 実現することができた
 と言っています。
 
 そのことについて
 ロギールの例を挙げて
 説明することによって
 自分が感じたことを
 より強く読者に伝えようとしています。

-------------------
■解答

 友人になったオランダ人の
 紙漉職人ロギールについて

「山奥の、電気が来ない
 捨てられた廃屋に住んでいて
 採算度外視で
 様々な木の皮を漉き込む実験をしていた。
 
 その結果、
 不思議なテクスチャや色合いの紙を
 たくさん作っていて、それが気に入り
 ロギールの作品を設計中のホテルの
 全客室に置くことにした。」

 ということを言おうとしている。
  
-------------------
★要約のコツ

 文章を要約する際は
 まずは、重要なところを見つけて
 そこに線を引くと良いです。

 その際
「この文章で何が言いたいのか?」
「具体例は何を言うためにあるのか?」
 を意識すると、重要なところが
 見つかりやすくなりますよ。
  
-------------------

タイトルとURLをコピーしました