2023年 開成中 大問題1 随筆(6/6)

論説文は、話題と
筆者の主張を掴みましょう。
 
「…について、筆者は~
 ということを言おうとしている。」  

 と考える(要約する)と
 内容が理解しやすくなります。
 
 2023年開成中学
 大問題1の文章の
 6分割中の最後の部分です。
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■次の文章を読んで

「…について、筆者は~
 ということを言おうとしている。」

 の型で要約しなさい。

※この問はオリジナルです。

※漢字の問のためにカタカナ表記のものは
 カタカナのままにしてあります。

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 以下の文章は、
 建築家である筆者が、
 1980年代の建築業界と、
 高知県檮原(ゆすはら)町での
 経験とをふりかえった文章です。

 なお、本文中の[=]は、
 出題者の付けた注・解説です。

バブルがはじけたタイミングで、
檮原に出会えたことは、
僕のその後の人生に
大きな意味を持った。

きっと、山にいる神様が、
僕を呼んでくれたのだと思う。

僕がニューヨークででくわした
85年のプラザ合意
[=為替レートの安定化策]
をきっかけにして、
20世紀をまわしていた
産業資本主義から、
金融資本主義へという
大きな転換が起こった。

金融資本主義とは、
地面と切り離された経済学である。

地面と切断されているがゆえに、
値段は糸の切れた風船のように、
限りなく高騰する。

その高騰を人々は経済成長であり、
繁栄であると錯覚する。

そしてバブルの崩壊のように、
突然に風船は破裂する。

檮原の人達は、
そんなものと無関係に生き、
生活している。

彼らと寄り添い、
その場所と併走することによって、
建築は再び大地とつながることが
できるかもしれないという
希望を手に入れた。

檮原の職人達が、
そのやり方を教えてくれた。

バブルがはじけようと、
どんな災害がやってこようと、
そんなことはおかまいなしに、
大地をタガヤして作物を作るように、
黙々と、ゆっくりと、
建築を作り続けていけばいいのである。

バブルがはじけた後の90年代の日本を、
「失われた10年」と呼ぶことがある。

実際その10年間、東京では、
ひとつの設計の依頼も来なかった。

それでも、90年代は
とても懐かしいし、楽しかった。

それは、檮原いう場所と、
檮原という方法と出会えたからである。

(隈 研吾(くまけんご)『ひとの住処』)

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■解説

 この文章で筆者が読者に
 伝えたいことは何でしょうか。

 その考えをもとに本文を見てみると
 以下の2カ所が見つかると思います。

★1「バブルがはじけたタイミングで、
   檮原に出会えたことは、
   僕のその後の人生に
   大きな意味を持った。」

★2「建築は再び大地とつながることが
   できるかもしれないという
   希望を手に入れた。 」

「僕のその後の人生に
 大きな意味を持った」ことや
「希望を手に入れた」ことは
 筆者にとって、プラスの方向への
 大きな転機なので
 これを読者に伝えたいのだと思います。 

「産業資本主義」と
「金融資本主義」の構造の違いを
 読者に分かって欲しいわけでは
 ないですね。

 ただ、★2の「大地とつながる」
 という表現は比喩なので
 読み手にとって分かりやすいように
 これを比喩を使わない表現にします。

 筆者によると
「大地とつながる」とは

★3「バブルがはじけようと、
   どんな災害がやってこようと、
   そんなことはおかまいなしに…
   黙々と、ゆっくりと、
   建築を作り続けていけばいい」
   ということですね。

 これは「檮原の職人達のやり方」ですが
 まさにこれが「大地とつながる」
 建築のあり方です。

東京:金融資本主義の建築 
   値段は限りなく高騰

檮原:大地とつながる建築 
   バブルなどに関係なく黙々と作る

 という対比構造を理解しましょう。

 ★1~3とまとめると
 以下のようになります。

★1「バブルがはじけたタイミングで、
  檮原に出会えたことは、
  僕のその後の人生に
  大きな意味を持った。」
★2「建築は再び大地とつながることが
  できるかもしれないという
  希望を手に入れた。 」
★3「バブルがはじけようと、
  どんな災害がやってこようと、
  そんなことはおかまいなしに…
  黙々と、ゆっくりと、
  建築を作り続けていけばいい」

◎「バブルがはじけたタイミングで、
  檮原に出会えたことは、
  僕のその後の人生に
  大きな意味を持った。

  バブルがはじけようと、
  どんな災害がやってこようと、
  そんなことはおかまいなしに
  黙々と、ゆっくりと、
  建築を作り続けていけばいい

  という希望を
  手に入れることができた。 」

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■解答

「バブルがはじけたタイミングで、
 檮原に出会えたこと」について

「僕のその後の人生に
 大きな意味を持った。

 バブルがはじけようと、
 どんな災害がやってこようと、
 そんなことはおかまいなしに
 黙々と、ゆっくりと、
 建築を作り続けていけばいい

 という希望を
 手に入れることができた。」

 ということを言おうとしている。
  
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★おまけ

 今日まで6回に渡って扱った
 開成中の大問題1については
 問をやらずに
 これにて終了したいと思います。

 問をやらない理由?

 それはもう、今までやった
 文章の要約によって
 答えのベースが
 できあがっているからです。

 問2は「戦場を失った武士」という
 比喩表現の説明
 問3は「東京と檮原の違い」を
 説明するものです。

 問2は6分割中の1番目と2番目
 問3は3、4、6番目の文章を
 抽象的に捉えれば書けますね。
  
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