今日は比喩を説明する際の
コツについてお伝えします。
そのコツは、
「~」とはどのようなことの比喩か
説明しなさい(答えなさい)
という問の場合
「~」の中にある表現は
答えの中に使ってはいけません。
それでは何についての比喩なのかの
説明(答え)にならないからです。
例えば、
「『犀のようにただひとり歩む』とは
どのようなことの比喩ですか」
という問の場合、答えの中に
「犀のようにただひとり歩む」
の中の表現は入れないようにしましょう。
それでは今日も
実際の入試問題を解いて
理解を深めます。
先日読んだ文章の問4になります。
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■次の文章を読んで、後の問に答えなさい。
●2022年2月25日(中略)
入ってくるニュースは、
どれも戦争に関係したことばかり。
いろんな人たちがあらゆるところで、
いろんな意見をいっています。
なんだか、ぼくたちも、
なにかをしなきゃならない、
なにかをいわなきゃならない。
そんなふうに追い立てられて
いるような気がします。
みなさんは、いかがでしょう。
ところで、ぼくの好きな、
お釈迦様のことばに、
こういうものがあります。
「犀のようにただひとり歩め」
このことばにはどんな意味が
あるのだろう、とよく考えます。
犀は群れない動物で、
ひとりで生きるのだそうです。
性質は鈍重で、視力も弱い。
けれども、嗅覚と聴覚に優れ、
自分の鼻先の一本の角を
まるで目印のようにして、
周りの世界を確かめながら、
ゆっくり、ただひとりで
前へ進んでゆくのです。
東日本大震災で原発が壊れたころ、
ぼくは、ある新聞で
論壇に時評を書いていました。
そして、原発についての
情報とハクネツした議論が、
ものすごいイキオイで
溢れだしていました。
そのことについて書こうとしたとき、
ぼくは、自分に、
なにかをいうだけの知識が
欠けていることに気づきました。
だから、ゆっくりやろう、
とぼくは自分にいい聞かせたのです。
最初にやったのは
苦手な物理の高校時代の教科書を
読むことでした。
それから、
原子力の基礎知識、
原子炉工学の教科書を
初級からステップを踏んで読み、
原子力学会の学会誌を読んで
意味がわかるようになったのは
その年の終わりでした。
けれども、そのころには、
もう原発や原子力問題について
書く必要がなくなっていたのです。
それでもよかった、
とぼくは思いました。
納得がいくところまで
犀のようにゆっくりただひとりで
歩いていくことができたのだから。
いま、ぼくは、
ウクライナの作家の作品を
ずっと読んでいます。
ウクライナ語から
ロシア語に訳されたものを
さらに翻訳ソフトにかけて、
ということもあります。
そして、
ウクライナと縁の深い、
たくさんのロシアの作家の作品も。
すると、少しずつ、
その国に住む人たちの
顔やことばづかいが
わかってくるような気がするのです。
それがなんの役に立つのか
という考えもあるでしょう。
もちろん、なにかをすぐに
しなければならないこともあります。
ぼくは「3【見る前に跳べ】」
ということばも大好きです。
けれども、
「4【犀のようにただひとり歩む】」ことを
忘れたくないとも、強く思うのです。
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■問
3【見る前に跳べ】
4【犀のようにただひとり歩む】とは、
それぞれどのようなことの比喩ですか。
簡潔に答えなさい。
※字数の制限はありません。
マス目がない解答欄の大きさにあわせて
記述する必要があります。
※実物大の解答欄を見たところ
おおよそ30字~50字だと思います。
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■解説・解答
まずいつものように
問で聞かれていることを確認します。
「【見る前に跳べ】
【犀のようにただひとり歩む】とは、
それぞれどのようなことの比喩ですか」
とあるので
【見る前に跳べ】と
【犀のように…】の2つについて
どのようなことの比喩なのかを答えます。
こういう場合は
「Aはaで、Bはbです。」という
「型」を使って答えましょう。
「【見る前に跳べ】は「…」ということで
【犀のように…】は「~」ということの比喩」
というように答えます。
次にそれぞれが何の比喩
つまりたとえなのか本文を見ますと
【見る前に跳べ】とは
「何かを計画したり考える前に実行せよ」
というような意味なので
それに似た表現を本文から探します。
すると【見る前に跳べ】の直前に
「なにかをすぐにしなければならないこと」
という表現が見つかりますね。
次に、
【犀のようにただひとり歩む】は
何のたとえなのか本文を見ると、
こちらは2カ所から表現が見つかります。
★「犀は群れない動物で、
ひとりで生きる…
周りの世界を確かめながら、
ゆっくり、ただひとりで前へ進んでゆく」
☆「納得がいくところまで
犀のようにゆっくりただひとりで
歩いていくことができた」です。
※【見る前に跳べ】と
【犀のようにただひとり歩む】は
どちらも抽象的な内容なので
抽象的な内容に絞って探します。
「嗅覚と聴覚に優れ…」、
「原子力の基礎知識…」、
「ウクライナの作家の…」
のような具体的な内容は
あまりじっくり読まずに
サッと読む(見る)だけにしましょう。
次に【犀のようにただひとり歩む】
について見つかった★と☆の表現を
簡潔にまとめます。
★「犀は群れない動物で、
ひとりで生きる…
周りの世界を確かめながら、
ゆっくり、ただひとりで前へ進んでゆく」
☆「納得がいくところまで
犀のようにゆっくりただひとりで
歩いていくことができた」
★+☆≒
「周りの世界を確かめながら、
納得がいくところまで
ゆっくり、群れないで前へ進む」
のようになります。
※問では
「【犀のようにただひとり歩む】は
どのようなことの比喩ですか」と
聞いているので、問の中にある
「犀のようにただひとり歩む」
という表現は答えの中に
入れないようにします。
すると
【見る前に跳べ】と
【犀のようにただひとり歩む】について
以下のように書けると思います。
「『見る前に跳べ』は
何かをすぐにしなければならないことで
『犀のようにただひとり歩む』は
周りの世界を確かめながら、
納得がいくところまで
ゆっくり、群れないで
前へ進むことの比喩。」
ただ、これだと字数が多すぎるので
内容を大幅に削り
以下のように書き直します。
「3は
何かをすぐにしなければならないことで
4は
納得がいくまでゆっくり群れないで
前へ進むことの比喩。」
※問には
「簡潔に答えなさい。」とあるので
「見る前に跳べ」のところを3
「犀のようにただひとり歩む」のところを
4と表現しました。
※「周りの世界を確かめながら」
≒「納得がゆくところまで」なので
どちらを使うか迷いましたが
問になっている箇所は
「ぼくは…『犀のようにただひとり歩む』
ことを忘れたくないとも、強く思うのです。」
とあるので
高橋さんが忘れたくない方である
「納得がいくところまで」を答えにしました。
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■解答(学校発表なし)
3は
何かをすぐにしなければならないことで
4は
納得がいくまでゆっくり群れないで
前へ進むことの比喩。
(50字)
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■編集後記
今回は比喩の問題でしたが
これは東大でよく出ます。
以前、筑駒の入試問題を
解説した際にもお伝えしましたが
これはあえて東大に似た問題を作り
中学入試の段階で
東大でよく出る問題に強い受験生を
入学させようという
中学校側の意図だと思います。
筑駒や桜蔭から
たくさんの東大合格者が出ているのが
理解できますね。
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