洛南 2023年 大問題1 問6 ※改題

次の文章を読んで
後の問いに答えなさい。

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●「【あたしね、杏里……すごく恐くて…
自分の思ったこと
正直に言うのすごく恐くて、
誰にもほんとうのこと、
言えないみたいな気持ちになってた】」

「うん」

杏里はゆっくり、うなずいた。

よくわかる。

美穂の言っていることが、
言おうとしていることがよく、
わかる。

友だちの誘いや話題に
「嫌」と言うのは難しい。

とても、難しい。

つい、臆病になってしまう。

臆病になって、
自分の心や意思をつい、
おさえこんでしまう。

杏里もそうだった。

苦い思いが胸を過ぎっていく。

「あたしさ、杏里に会う前に
友だちから無視されたことがあって…
知ってた?」

「うん。バーガーショップで、
※前畑くんから聞いた。

あたしが教えてって頼んだの」

「そっか。

※ヒサ、そのこともしゃべったか。

うん、そうなんだよね。

あたしだって、相手を傷つけるって
わかっていることを
言っちゃいけないって、
それぐらい、
ちゃんと考えてるんだ。

相手の心が傷つくってわかっていながら、
わざと言うなんて最低だって」

(中略)

「あたし、おしゃべりだし、
考え無しのとこあるし、
鈍かったりするし……だから、ときどき、
相手を嫌な気分にさせちゃうんだ。

そういうとき、そういうとき……
ちゃんと言ってほしいの。

『美穂、今、
すごく嫌なこと言ったよ』って。…」

(中略)

(あさの あつこ『一年四組の窓から』)

※「前畑くん」 「ヒサ」…前畑久邦ひさくに

 杏里と美穂の共通の友人。

 美穂とは幼なじみ。

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■問

●【あたしね、杏里……
 すごく恐くて……
 自分の思ったこと正直に言うの、
 すごく恐くて、
 誰にもほんとうのこと、
 言えないみたいな気持ちになってた】
 とありますが、美穂が
 このような気持ちになっていたのは
 なぜだと考えられますか。

 次のア、イの中から
 ふさわしいものを選んで
 記号で答えなさい。

ア 友だちということにあまえてしまい、
  相手が傷つくことを知りつつ、
  嫌だと言いはなっていた過去があるから。

イ 考えが浅く、
  結果的に相手を傷つけることを
  言ってしまうことになり、
  人間関係をこじらせたことがあるから。

※本来はア~オの5択ですが
 答えとかけ離れている
 3つの選択肢を削りました。

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■解説・解答

 まず、各選択肢を見る前に
 本文を見て、何が原因で美穂が
 「誰にもほんとうのこと、言えない…
 気持ちになってた」のか確認すると
 
 「あたしさ、杏里に会う前に
 友だちから無視されたことがあって…」

 とあるので、美穂は過去に
 友だちから無視されていたことが
 分かります。

 なぜ無視されていたのか
 直接的には書かれていませんが
 この直後の美穂のセリフに

 「あたしだって、相手を傷つけるって
 わかっていることを
 言っちゃいけないって、
 それぐらい、
 ちゃんと考えてるんだ。
 相手の心が傷つくってわかっていながら、
 わざと言うなんて最低だって」

 とあるので
 相手を傷つけることを言ったから
 無視されてしまったことが分かります。

 さらにこの後のセリフに

 「あたし、おしゃべりだし、
 考え無しのとこあるし、
 鈍かったりするし……だから、ときどき、
 相手を嫌な気分にさせちゃうんだ。」

 とあるので
 相手を傷つけようとして
 言ったわけではないのに
 結果として相手を傷つけてしまった
 ということが読み取れます。

 だから恐くなって
 誰にもほんとうのことを 
 言えなくなってしまったのですね。
 
 ここまでを整理すると
 以下のようになります。

 傷つけるつもりはなかったが
 相手を傷つけることを言ってしまった。
 ↓
 その友だちから無視されるようになった。
 ↓
 恐くなり誰にもほんとうのことを
 言えない気持ちになった。
 

 ではここまで分かったところで
 選択肢を見てみましょう。

※選択肢の一文が長すぎて
 理解しづらい場合は
 必要に応じて区切ると良いと思います。

 その際は読点(、)や
 意味の切れ目で切りましょう。

ア 友だちということにあまえてしまい、
  相手が傷つくことを知りつつ、
  嫌だと言いはなっていた過去があるから。

  「友だちということにあまえてしまい」
  という内容は
  本文からは読み取れません。

  どんなに本当っぽくても
  本文に書かれていないことは×です。

  また「相手が傷つくことを知りつつ」も
  違いますね。

  「相手が傷つくことを知りつつ」言って
  それが原因で無視されたのなら
  次からは相手が傷つくことを
  言わないようにして
  発言するようになるはずです。

  そうではなく
  意図せずに相手を傷つけてしまい
  無視されるようになってしまったので
  美穂はすごく恐くなってしまい
  ほんとうのことが
  言えなくなってしまったのです。

イ 考えが浅く、
  結果的に相手を傷つけることを
  言ってしまうことになり、
  人間関係をこじらせたことがあるから。

  これが正解ですね。

  「人間関係をこじらせたこと」とは
  友だちから無視されるように
  なってしまったことを言っています。

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■解答(学校発表なし) イ
  
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■おまけ

 洛南は共学ですが
 このお話では、女子同士の
 人間関係が描かれているので
 男子より女子の方が解けると思います。

 では、男子はどうしたら良いのかと言うと
 勉強して理解するしかないと思います。

 ドラマや映画を観る手もありますが
 そもそも小学生男子はそういうものに
 興味を示さないと思います。

 私もかつて男子でした。
 勉強すれば理解できるようになります。 
 
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