2023年 渋渋谷 第1回入試 大問題1 問3

■次の文章を読んで
 後の問に答えなさい。

※漢字を答えさせるために
 カタカナ表記のものは
 カタカナのままにしています。

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「歩くの嫌いか?」

普段の人懐っこさとか、
気さくな先輩という印象からはほど遠い、
低く冷たい蔵前の声がする。

怒っている。

確かに彼は怒っている。

険しい顔の蔵前と、
八千代の背中。

【中略】

「過酷な競技だよ。

苦しいことばかりだ。

俺だってそうだ。

でも、歩いてるときの君は、
刑罰でも受けてるような顔をしてる。

早くこの刑期を終えて
自由になりたいって顔だ」

【中略】

「違うの? 

本当はさ、走りたいんじゃない?

走りたいけど仕方なく競歩やってない?

走れない鬱憤(うっぷん)とか苛立ちを
エネルギーに競歩をやるなら、
それを走ることに向けた方が
いいんじゃないの?」

蔵前の言っていることは、
多分、正しい。

【中略】

「さっきも必死に俺についてきたけど、
あれがレースだったら失格だ。

『冷静になれ』って何回言った?

なのに、勝手に焦って
不安になって食らいついてくる。

今のままじゃ、日本選手権だろうと
全日本競歩だろうと、
ラストで勝負すらできずにまた負けるよ」

正しい、本当に、
彼が言っていることは正しい。

流石は日本代表だ。

的確に、八千代の
本質と弱点を見抜いている。

その蔵前の顔が、
シンソコ恐ろしかった。

「八千代は、競歩で
どこに行きたいの?」

【中略】

彼から漂う凄みのようなものが、
じりじりと肌を焼いてくる。

【中略】

黙り込んだ八千代を、
蔵前は凝視していた。

しばらくして彼は両手を
ゆっくり腰に持っていき、
八千代を覗き込むようにして
ニイッと白い歯を覗かせた。

【中略】

「というわけで、
明日も頑張りましょう。」

●【にこやかに言って、
蔵前は何事もなかったみたいに
合宿所に入っていった。】

額賀 澪(ぬかが みお)著

『競歩王』より

※蔵前…競歩のコーチ

※八千代…競歩の男子選手

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■問 

●【にこやかに言って、
 蔵前は何事もなかったみたいに
 合宿所に入っていった】とありますが、
 ここまでの場面で描かれている蔵前の
 説明として最もふさわしいものを
 次の中から1つ選びなさい。

イ 競歩に取り組む
  八千代の考え方に疑問を感じ、
  その真意を執拗(しつよう)に
  追求した彼からは、いつもの気さくで
  さっぱりした雰囲気は消えうせ、
  競歩のエキスパートとしての
  気位の高さが感じられた。

  しかし最後には、
  何事もなかったかのように
  八千代に対して再び
  さわやかな笑顔を向けている。

エ 競歩に取り組む八千代の
  姿勢に対してあえて
  怒りをあらわにしてみせ、
  厳しい言葉を投げかけた彼からは、
  いつもの親しみやすく
  明るい雰囲気は消えうせ、
  日本競歩界を背負う者としての
  威厳が感じられた。

  しかし最後には、
  沈黙する八千代に対して
  あっけらかんとした様子で
  晴れやかな笑顔を向けている。

※本来はア~オの5択でしたが
 2択にしました。

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■解き方の手順

1 問で聞かれていることを確認する。

  何について考えるのか?

2 1にもとづいて本文を読みかえす。

  正誤の判断材料になりそうな
  ところに線を引く。

※本文全てを丁寧に読む必要はない。
 
 正誤の判断材料が書かれていそうな
 ところだけ丁寧に読む。 

3 2で見つけた箇所にもとづいて
  それぞれの選択肢の正誤を判断する。

※選択肢が長くて分かりづらい時は
 細分化して考えても良い。

 その際は句読点などで切り
 そこに/(スラッシュ)を入れる。

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■解説・解答

 まず、イの選択肢の中にある「気位」は
「きぐらい」と読み、「気位が高い」とは
「自分を貴いと見なし、その品位を重んじる」
 という意味です。

 さて、解き方の手順に従って
 解いていきましょう。

1 問で聞かれていることを確認する。

  何について考えるのか?

⇒蔵前という人物についてですね。

2 1にもとづいて本文を読みかえす。

 正誤の判断材料に
 なりそうなところ

「『歩くの嫌いか?』
 普段の人懐っこさとか、気さくな
 先輩という印象からはほど遠い、
 低く冷たい蔵前の声…
 怒っている…
 険しい顔の蔵前」

「過酷な競技だよ。…
 歩いてるときの君は、
 刑罰でも受けてるような顔をしてる。」

「違うの?…走りたいけど
 仕方なく競歩やってない?」

「流石は日本代表だ。…
 その蔵前の顔が、
 シンソコ恐ろしかった。」

「両手をゆっくり腰に持っていき、
 八千代を覗き込むようにんしてニイッと
 白い歯を覗かせた」

3 2で見つけた箇所にもとづいて
  それぞれの選択肢の正誤を判断。

※選択肢が長くて分かりづらい時は
 細分化する。

 その際は句読点などで切り
 そこに/(スラッシュ)を入れる。

イ 【競歩に取り組む
 八千代の考え方に疑問を感じ、/】
⇒〇

「でも、歩いてるときの君は、
 刑罰でも受けてるような顔をしてる。 」

「違うの? 本当はさ、
 走りたいんじゃない?
 走りたいけど仕方なく競歩やってない? 」

 と蔵前は言っていますね。

【その真意を執拗(しつよう)に
 追求した彼からは、いつもの気さくで
 さっぱりした雰囲気は消えうせ、/】
⇒×

「執拗には追求していません」

 この部分が×である以上
 これより後は見なくて良いです。

エ 【競歩に取り組む八千代の
 姿勢に対してあえて
 怒りをあらわにしてみせ、/】
⇒〇

「『歩くの嫌いか?』…
 低く冷たい蔵前の声がする。
 怒っている。」より

【厳しい言葉を投げかけた彼からは、/】
⇒〇

「歩いてるときの君は、
 刑罰でも受けてるような
 顔をしてる。…
 走りたいけど仕方なく
 競歩やってない?」より

【いつもの親しみやすく
 明るい雰囲気は消えうせ、/】
⇒〇

「普段の人懐っこさとか、
 気さくな先輩という印象」より

【日本競歩界を背負う者としての
 威厳が感じられた。/】
⇒〇

「流石は日本代表だ。…
 蔵前の顔が、
 シンソコ恐ろしかった。」より

【しかし最後には、
 沈黙する八千代に対して
 あっけらかんとした様子で
 晴れやかな笑顔を向けている。】
⇒〇

「黙り込んだ八千代を…
 覗き込むようにして
 ニイッと白い歯を覗かせた」より

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■解答(学校発表なし)エ

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★おまけ

 渋々の選択肢は5択で
 それぞれがとても長いです。

 でも変に難しく感じないでください。

 解く手順は4択のときと全く同じです。

 渋々は選択肢問題が多いので
 これを攻略することが
 合格へのカギになります。

 コツを掴んでコツコツと努力しましょう。
 
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