■次の文章を読み、
後の問いに答えなさい。
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これは、
とある農村での話である。
この村の住民はそれぞれ、
自宅でウシを飼っていた。
ウシたちは、
村共有の牧草地で放牧され、
草を食んで暮らしていた。
村人は、ウシの乳をしぼったり、
ときにウシを市場に売ったりして
くらしの足しにしていたのである。
こういう状況がながく続き、
村人たちの生活は安定していたのだが、
ある日、知恵のはたらく村人が、
自分の飼うウシの数を
増やすことにしたのである。
子ウシを何頭も買ってきて
共有地で放牧し、
大きくなったら売りさばく。
こうしてこの村人は成功し、
財をなしたのである。
これを見ていたほかの村人たちも
「よし、おれもウシの数を増やそう」
と思い立ち、その結果村の共有地で
放牧されるウシの数が激増するに至った。
しかし、共有地の
面積にはかぎりがあり、
そこで育つ牧草の量にもかぎりがある。
やがて牧草は食べつくされ、
ウシたちはみんな飢え死にしてしまった。
結局村人たちはみなお金を損して、
不幸になってしまった。
これが●【共有地の悲劇】という
寓話[=教訓的な話]である。
(伊勢 武史(いせ たけし)著
『2050年の地球を予測する―
科学でわかる環境の未来』より
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■問
●「共有地の悲劇」について、
次の問いに答えなさい。
「共有地の悲劇」と同様の仕組みで
発生する事例として
“当てはまらないもの”を
次から1つ選び、記号で答えなさい。
ウ 町内会の地域清掃は面倒だからと
皆が参加しなくなった結果、
害獣や害虫が増え、
住みにくい街になってしまった。
エ 伐採した樹木の代わりに
植林を進めて環境保全に努めた結果、
多くの人が花粉症に
悩まされるようになってしまった。
※本来はア~エの選択肢でしたが
このメルマガ用にアとイの
選択肢は削除しました。
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■解説・解答
いきなり選択肢を見る前に
「共有地の悲劇」とはどういうことなのか
その構造を抽象的に捉えましょう。
(抽象的に捉えることによって
具体例が正しいかどうか判別できます。)
※ 彼の趣味はスポーツだ。
→○サッカー、野球、ラグビー
×映画鑑賞
「とある農村での話」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これを見ていたほかの村人たちも
「よし、おれもウシの数を増やそう」
と思い立ち、その結果村の共有地で
放牧されるウシの数が激増するに至った。
しかし、共有地の
面積にはかぎりがあり、
そこで育つ牧草の量にもかぎりがある。
やがて牧草は食べつくされ、
ウシたちはみんな飢え死にしてしまった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
をもとに「共有地の悲劇」
について考えると
「一人一人が自分の利益を追求した結果
みんなが損をすることになってしまった。」
ということですね。
このように抽象化できたら
各選択肢を見ましょう。
ウ 町内会の地域清掃は面倒だからと
皆が参加しなくなった結果、
害獣や害虫が増え、
住みにくい街になってしまった。
前半の
「町内会の地域清掃は面倒だからと
皆が参加しなくなった」は、
一人一人が自分の利益を
追求していますね。
そして後半の
「害獣や害虫が増え、
住みにくい街になってしまった」も
みんなが損をすることに
なってしまった結果ですね。
つまり「共有地の悲劇」と同様の
仕組みなので答えとしては×です。
エ 伐採した樹木の代わりに
植林を進めて環境保全に努めた結果、
多くの人が花粉症に
悩まされるようになってしまった。
前半の「伐採した樹木の代わりに
植林を進めて環境保全に努めた」は
一人一人が自分の利益を
追求していませんね。
「植林を進めて環境保全」は
一人一人の利益ではなく
みんなの利益を追求しています。
したがって、「共有地の悲劇」と
同様の仕組みではないため
答えとしては○になります。
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■解答(学校発表なし) エ
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★おまけ
伊勢さんは、生態学者で、
高校卒業後しばらく働き
アメリカのワイオミング大学で
生物学を学んだあと
ハーバード大学大学院に進学され
進化・個体生物学部を
修了されています。
現在は、京都大学
フィールド科学教育研究センターで
教授をされています。
NATIONAL GEOGRAPHICのWeb版に
ご本人による経歴の説明が
掲載されています。
この『2050年の地球を予測する
ー科学でわかる環境の未来』は
2022年1月出版で
浦和明の星の他に
海陽中等教育、大妻、巣鴨、
京都女子、青山学院横浜英和
洗足学園で出題されました。
出版から約1年後の入試で
7校の入試に出題されるとは
すごいですね。
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