■次の文章を読み、
後の問いに答えなさい。
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人類の祖先は
数百万年前に生まれて、
それからずっと、
つい一万年前くらいまでは、
狩猟採集で食べものを得る原始時代
(旧石器時代)のくらしを送っていた。
農耕や牧畜がはじまる前の
原始時代のくらしはたいへんきびしく、
人類の人口はとても少なかった。
(中略)
人口密度が極端に低い
時代の彼らにとって、
地球のサイズは
無限と考えても問題がなかった。
どんなにがんばっても
地球の資源を使いつくすことは
できなかったのである。
だから、ひたすら
できる限りの資源の収奪を行うことが、
彼らにとってベストな戦略だったのだ。
(中略)
やがて農耕や牧畜が始まった。
すると食料が安定して
供給されるようになり、
人口密度が増加する。
それと同時に人びとは
定住生活をするようになる。
人間のライフスタイルが
このように変わっていくと、
原始時代のように後先考えずに
資源を使い切ってしまうと
困ることが増えてきた。
(中略)
こうして人びとは次第に、
持続可能な利用という
コンセプト[≒考え方]を身に着け、
社会のルールや道徳に組み込んで、
現代にいたる。
(中略)
しかし、人間は
つい一万年くらい前までは
旧石器時代を生きていた。
人間はそんなに急に
変わることはできないので、
現代人の遺伝子も
●【原始時代の記憶】を引きずっている。
だから容易に
共有地の悲劇を引き起こす。
これは人がもって生まれた性なのである。
(伊勢 武史(いせ たけし)著
『2050年の地球を予測する―
科学でわかる環境の未来』より
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■問
●【原始時代の記憶】の内容として
“当てはまらない”ものを次から選び
記号で答えなさい。
イ 狩猟こそが生存に必要な
食料確保の手段である。
エ できる限り天然の資源を
収奪することが望ましい。
※本来はア~エの4択でしたが
2択にしました。
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■解説・解答
まず、時代による
ライフスタイルの違いを
簡単におさえておきましょう。
・原始時代⇒狩猟採集
(旧石器時代)
↓
・農耕や牧畜が始まる
(約1万年前)
↓
・現代
次に、【 】を含む一文を
よく読みましょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
人間はそんなに急に
変わることはできないので、
現代人の遺伝子も
【原始時代の記憶】を引きずっている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
とあるので、現代まで
“引きずってしまっている”
【原始時代の記憶】について考えるべきです。
ただ単に【原始時代の記憶】だけ
考えればよいわけではありません。
それを踏まえて各選択肢を見ましょう。
イ 狩猟こそが生存に必要な
食料確保の手段である。
本文の冒頭に
~~~~~~~~~~~~~~~~
人類の祖先は
数百万年前に生まれて、
それからずっと、
つい一万年前くらいまでは、
狩猟採集で食べものを得る原始時代
(旧石器時代)のくらしを送っていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~
とありますが
もしこの記憶を
現代までずっと引きずっていたら
その後、農耕や牧畜はしていません。
現代まで“引きずっている”
【原始時代の記憶】の内容として
“当てはまらない”ので
答えとしては〇です。
エ できる限り天然の資源を
収奪することが望ましい。
これは本文に
~~~~~~~~~~~~~~~~~
できる限りの資源の収奪を行うことが、
彼らにとってベストな戦略だったのだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
と書いてあり
現代まで“引きずっている”記憶です。
だから共有地の悲劇
(≒シラスウナギの乱獲)を
引き起こしてしまうのですね。
【原始時代の記憶】として
“当てはまる”ので
答えとしては×です。
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■解答(学校発表なし)イ
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★おまけ
この問の答え、
声の教育社では“イ”なのに対し
東京学参では“エ”となっています。
なんでエなんだろうと思い
東京学参の解説を
何回も何回も読みましたが
私には理解できませんでした…。
たまにこういうことが起きてしまうので
過去問集は解説があるものを
全て買うのが良いと思います。
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