2023年 武蔵(私立) 大問題1 問3

■次の文章を読んで
あとの質問に答えなさい。

頭木かしらぎ弘樹さんの
『食べることと出すこと』です。

頭木さんは、
20歳のときに潰瘍性大腸炎を患い、
50代になった今も、
病気と付き合いながら生活しています。

そのため、
何でも食べられるわけではなく、
「これを食べると
激しい腹痛や下痢になる」
というものがあります。

あるとき、
頭木さんは仕事の打ち合わせで、
食事をすることになりました。

指定の店に行くと、
すでにお勧めの料理が注文されており、
頭木さんが選ぶことが
できない状態でした。

注文された料理が出てくると、
それは食べることができないものでした。

相手は「これおいしいですよ」と、
頭木さんに勧めます。

(中略)

頭木さんは
「すみません。
これはちょっと無理でして」
と答え、食べられないもので
あることを伝えました。

相手は
「ああそうですか。 それは残念です」
と答え、その場はいったん
収まったものの、 しばらくすると、
また同じものを勧めてきました。

「少しくらいなら
大丈夫なんじゃないですか」
と言って、食べることを促します。

難病を抱える頭木さんにとって、
その料理を口にすることは、
いくら 「少しくらい」であっても、
大変な不調をきたすことにつながり、
どうしてもできません。

そのため、
手を付けないままにしていると、
周りの人まで
「これ、おいしいですよ」とか
「ちょっとだけ食べておけば
いいじゃないですか」
とか言いながら、
同調圧力を強めてきます。

(中略)

確かに相手は、
頭木さんに
「おいしいものを食べさせたい」という
利他的な思いがあったのでしょう。

(中略)

実際、頭木さんにとって、
食べられないものを
食べるように勧められることは、
迷惑どころか、場合によっては
命の危険にさらされる危険な行為です。

当然、
受け入れることはできません。

(中略)

頭木さんの病気を熟知している上、
「食べられないものだ」
ということを知らされても、
時間が経つと
「少しぐらい大丈夫なんじゃないですか」
と言って、自己の行為を
押し付けようとします。

こうなると、
「この料理を食べさせてあげたい」
という「利他」が、
「自分の思いを受け入れないなんて
気に入らない」
「何とかおいしいと言わせたい」という
「利己」に覆いつくされ、
頭木さんに襲いかかってきます。

●【利他的押し付けは、
頭木さんにとっては恐怖でしかありません】。

( 『思いがけず利他』
  中島 岳志たけしより)

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■問
 
●【利他的押し付けは、
 頭木さんにとっては
 恐怖でしかありません】とあるが、
 それはどういうことですか。
 
※この問自体に字数制限はありません。

 マス目がない解答欄の大きさに合わせて
 記述する必要があります。

 実物大の解答欄を見たところ
 約100~130字だと思います。

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■解説・解答

 こういう、
「傍線部はどういうことですか。」
 というタイプの問題は

1 傍線部を細分化する。

2 その細分化された各部分を
  本文の他の所で
  詳しく言い換えている所を探す。

3 それらの箇所をまとめて記述する。

 という手順を踏めば良いわけです。
 
※このメルマガでは、傍線は引けないので
 【 】内のことだと思ってください。

 まず手順1に関しては

 【利他的/押し付けは、/
 頭木さんにとっては/
 恐怖でしかありません】

 というように切ると良いと思います。

 次に手順2ですが
 今細分化した各部分について

【利他的/=?
 押し付け/=?
 恐怖でしかありません】=?

 と考えて、本文の他の
 箇所を見ていきます。

※「頭木さんにとっては」は
 言い換える必要はありません。

 抽象的な話ではなく
 頭木さんにとっての具体的な話を
 述べればいいんだと
 認識しておけば良いです。

 すると以下の箇所が
 見つかるのではないでしょうか。

【利他的/=
★1「頭木さんに『おいしいものを
 食べさせたい』という思い」

※「利他的」を説明するので
「利他的」という表現は
 言い換えには使わないようにします。

 押し付け/=
「頭木さんに勧めます」
「食べることを促します」
「同調圧力を強めてきます」
 
 この3つをまとめると

★2「頭木さんに
 食べられないものを勧め
 同調圧力もかけてくる」

 のようになります。

※「食べられないものを」を補いました。

※「勧めます」≒「促します」なので
 「勧めます」だけ使いました。

 恐怖でしかありません】=
★3「命の危険にさらされる危険」がある

 そして★1~3をまとめます。
(見やすいように★1~3を再掲します。)

★1「頭木さんに『おいしいものを
 食べさせたい』という思い」
★2「頭木さんに
 食べられないものを勧め
 同調圧力もかけてくる」
★3「命の危険にさらされる危険」がある

◎「頭木さんに『おいしいものを
 食べさせたい』という思いから

 頭木さんに
 食べられないものを勧め
 同調圧力もかけてくる行為は

 頭木さんにとっては

 命の危険にさらされる危険がある
 ということ。」

※学校が発表している
〈受験生解答例〉と
 表現が少し違いますが
 この解説は、武蔵の先生が
 書かれた解説をもとにしており
 内容はほとんど同じなので
 配点の全てがもらえると思います。

 最後に問(傍線部)とつなげて
 意味が分かるか確認します。

問【利他的押し付けは、
 頭木さんにとっては
 恐怖でしかありません】
 とあるが、それは

答「頭木さんに『おいしいものを
 食べさせたい』という思いから
 頭木さんに
 食べられないものを勧め
 同調圧力もかけてくる行為は
 頭木さんにとっては
 命の危険にさらされる危険がある
 ということ。」

 大丈夫ですね。

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■〈受験生解答例〉(学校の発表)

 相手は、 
 頭木さんのことを思って、 
 おいしい料理を勧めたが、 
 それを拒絶されたことで、 
 相手は何とかおいしいと 
 言わせたいという欲望へと変わり、 
 料理をおしつけるようになった。 

 これは、料理を食べると 
 死に至るかもしれない 
 頭木さんにとっては、 
 とても恐ろしく感じるということ。

 (129字)

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★おまけ

 武蔵の先生が書かれた講評を引用します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  なお、今回も採点していて
  日本語の乱れが気になった。

 「食べれない」というら抜き言葉は
  数えきれないぐらい多かったが、
  本文に引用されている
  ブログのようなものならともかく、
  書き言葉では使えないので
  注意して欲しい。

  また「断りずらい」というような
  仮名づかいの誤りを見かけることが
  近年多くなったが、受験生の中にも
  少なからず間違っている者がいた。 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 こういったことで
 減点されないようにしましょう。

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